慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は、タバコを吸う方に発症する代表的な呼吸器疾患(肺の病気)で、肺の生活習慣病ともいわれています。
ご高齢での発症が多く、その頻度は喫煙者の約20%前後と考えられます。
問診や診察で慢性的な咳や痰、息切れがみられる場合、胸部レントゲン検査、胸部CT、スパイロメトリー(呼吸機能検査)などを行い診断します。
COPDの発症には、長期の喫煙が深く関係しており、タバコの煙に含まれる有害物質によって肺や気管支に慢性的な炎症が起きます。
初期には症状がほとんど無いか、咳、痰がみられる程度ですが、徐々に歩行や日常のちょっとした動作で息苦しいと感じるようになり、進行すると安静にしていても息切れを感じます。
COPDの治療として、禁煙を始めとする生活習慣の改善や薬物療法、呼吸理学療法などを行います。
また肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種し肺炎予防につとめます。
進行性の病気であるCOPDは、早期に診断し治療を開始することが大切です。
咳や痰、息切れなどCOPDの症状がみられたら病院を受診するようにしましょう。
COPDを疑う特徴
- 喫煙歴がある(特に40歳以上)
- 咳(せき)、痰(たん)、喘鳴(ゼイゼイという音)がある
- 階段や坂道をのぼると息が切れる
- 風邪をひくと咳、痰、息切れがでる
- 年に何度も風邪をひく、または回復するのに時間がかかる
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールなど)、狭心症・心筋梗塞、骨粗しょう症などがある
※日本呼吸器学会COPDガイドライン2019より、一部改変
これらの特徴のある方は、COPDの可能性があります。クリニックへご相談ください。
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COPDの画像の特徴
COPDの胸部単純X線写真(左下)では、肺の一部が黒くなり(気腫化)、横隔膜が平坦になっている(肺の過膨張)のが確認できます。また胸部CT画像(右下)では、左肺の気腫化(黒く大きな袋のようになっている)が強く、右肺でもところどころで黒く穴があいたようにみえます。
COPDと禁煙
COPDは、長期の喫煙が深く関係した病気であり、その予防には禁煙が最も大切です。
もしCOPDを発症した方でも、禁煙により病気の進行を遅らせたり、予後を改善することができます。
喫煙により生じる肺の病気はCOPD以外に肺がんや肺線維症など様々ですので、COPDが疑われたら早期に喫煙習慣を見直し、健康な生活を送りましょう。
当院では保険診療による禁煙治療も行っています。ご興味のある方は、ぜひご相談ください。
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COPDとワクチン接種
1. インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンを接種することで増悪(普段よりも咳や痰、息切れが悪化すること)や入院回数を減らすことがわかっています。ある調査では、65歳以上のCOPD患者さんにインフルエンザワクチンを接種したところ、インフルエンザや肺炎による入院を30%減少させ、死亡を50%減らせたと報告されています。これらのことからすべてのCOPD患者さんでインフルエンザワクチンの接種がすすめられています。
2. 肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは、
- 65歳以上の定期接種に指定されている23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)
- 小児の定期接種に指摘されている13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー)
の2種類があります。
COPD患者さんに肺炎球菌ワクチンを接種したところ、肺炎や増悪、肺炎の重症化を有意に抑制する効果がえられました。
そのため65歳以上のすべてのCOPD患者さんで肺炎球菌ワクチンの接種がすすめられています。
ニューモバックス(①)は肺炎球菌のカバー率が高い(23種類と多い)ことが特徴で、プレベナー(②)は肺炎球菌に対する免疫力の誘導が高い(抗体を作る力が強い)ことが特徴です。
通常はまず①を接種し、より強力な予防効果を期待したい場合に②を追加で接種します。
大人のワクチン接種についても、ご不明なことがございましたら、ご相談ください。
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